S1マクダノ部分車内を漂う甘い匂いにスティーヴは顔を顰めた。
匂いの元はすぐにわかる。
スティーヴの相棒でこの車の持ち主のダニー・ウィリアムズだ。
隣の助手席にいるダニーは抱えた紙袋から四角いパンのようなものを取り出しむしゃむしゃ頬張っている。
「それ何?」
匂いと見た目で何かは予想出来てたが敢えてスティーヴは聞いた。
「何って?」
「今食べてる物」
「バターモチ。何?知らないの?」
ハワイ生まれの癖に?とでも言いたげな顔でダニーはスティーヴを見た。
スティーヴだって知っている。
母が作ってくれた記憶はないが、幼い頃スーパーで買ってきてくれたそれをおやつとして食べた事があった。
ハワイを長く離れてはいたが、戻って来てからスーパーでそれを見かけることもあったので覚えていないわけでもない。
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