花筏(シトガイ) 夕べ、ガイと連れだって散歩に出た。
電車に乗って20分程度の桜の名所。先日劇団近くの公園でみんなと花見はしていたが、テレビで見て気になっていたところに、二人で行くことになった。デートのつもりだが、隣に座っている男は気づいているだろうか。
半袖に着替えるにはまだ早いが、もう日が沈んでも何か羽織らなくてもいいような、散歩にはちょうどいい季節だ。
駅から出ると同じ目的であろう人達でごった返していた。「わぁ、ヒモ笑いネ」とつぶやくと、うまく聞き取れなかったのか、ガイが首を傾げた。春組のみんななら、きっとツッコんでくれていただろう。
「ポンコツ相手だとボケ甲斐がないヨ」
ガイの腕をポンポンと軽くたたいた。
まっすぐ目的地に向かおうとするガイを引きとめて、逆方向の出口にあるコンビニに入った。
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