星送りかる〜いお話
今日は星送祭。
星の欠片に願いを込めて空へと送る日だ。僕はもう星を送り終え、一人で出店でも回ろうかと考えていたとき、誰かが僕の袖を引っ張った。
「姉さん、助けてくださいよ〜。」
兄弟が、こちらを上目遣いで見ながら、助けを求めてきた。きっと星の欠片を上手く送れないのだろう。
「どうしたんだ、兄弟?コツならさっきも教えただろ。」
「そういう問題ではないんですって!」
「はは、そう怒るなって、何回でも教えてやるから。」
「はい、お願いします!」
兄弟はそう言って手のひらの星の欠片に魔力を込め始めた。
そして一瞬だ光を発した。が、すぐに光は弱まり、兄弟手のひらにポソッと落ちた。
「...またです。何回やってもこれなんです。」
そう兄弟はため息をつき、肩を落とした。
しかし、この現象は見覚えがある。
「...なあ兄弟、願い事は込めたか?」
「......あ!!」
やっぱりだ。
「ははは、願い事を込めながらの方が、上手くいくことが多いんだ。兄弟のことだからすっかり忘れたんだろう?」
「はい、姉さんの言う通りで...」
兄弟はよく周りが見えない癖がある。一生懸命な証ではあるんだが。
そういうところが、彼が赤リボンになれない理由だろう。
「ところで、兄弟は何を願うんだ?」
「もちろん、"真実が皆さんの前で平等でありますように"ですよ。」
「...はは、即答だね。赤リボンになりたい、とかじゃないのか?」
「まぁ、そりゃ赤リボンになりたいとは思ってますよ。でも、それはあくまで真実を広めるための手段です。別にそこに固執しなくたっていいでしょう。終わり良ければ全て良し、掉尾を飾る。というか、赤リボンが無理なこと、姉さんが1番わかっているのでは?」
...諦めているのか。
「はは、そうか、兄弟はそう思っているのか。でも、不可能なことなら尚更、星に願った方がいいんじゃないか?僕はそういうのは否定しないけどね。」
そういうと、兄弟は悲しそうにふっと笑った。
「まぁ、そんなことは置いときまして、もう一度やってみましょう。もう一度見て貰えませんか?」
「あぁ、もちろん。」
そう僕が頷くと、兄弟はにっこり笑って、手のひらの上の星の欠片をじっと見つめた。そしてゆっくり息を吸い、魔力を込め始めた。
すると、今度は星の欠片は強い光を発したまま、真っ暗な空に浮かんで行った。
「やったな、きょうd」
「やった!!!!やりましたよ!!!!」
兄弟はかなり嬉しいようで、やったと大声を出しながらその場で飛び跳ねていた。そして僕の腕をブンブンと振っている。正直言って、痛い。
「兄弟、兄弟。落ち着いてくれ。お願いだから。」
そういうと、はっとした表情で兄弟は手を離した。
「す、すいません。つい熱中して、しまって。」
「だ、大丈夫だ兄弟。というか、もうこれで星を送るのは終わりか?ならいっしょにお店でも回ろうか。今日は何でもおごるよ。」
「!ほんとですか?じゃあソーダが飲みたいです、ソーダ!」
「はは、わかったよ。早速いこうか。」
「はい!いきましょう!あちらにたしかあったかと!」
そういって、兄弟は先に走っていってしまった。
「...そんなに急がなくても、まだ祭りは長いのに。」
そう呟いて、兄弟の後ろをついていく。
小さい兄弟の背中を見ながら、思う。
彼は諦めていた。半年前に掲げていた、紫リボンという夢を。真実を広める、という本質は変わってないが、問題はそこではない。
僕か。僕が諦めろなんて言ったから、だろうか。
「......ふふ、早速願いが叶って良かった。」
そう、思わず笑って呟いた。
"僕が安心して過ごせますように"
僕はそう星に願った。もう星が還って、降って来たのかもしれない。
そして、僕って悪いやつだと、改めて思った。