見慣れきった怖いカオ「……っ、うぅ……、」
どれだけ逃げたのだろう、走りすぎたせいで息が苦しい。そのくせ深く呼吸するのすら恐ろしくて、口元に手を押し当て必死に呼吸を押し殺す。
辺りに漂う空気は、明らかにいつもと違っていた。ぬるいのに寒気の走るような温度が皮膚を撫で、頭が今までにないくらいの危険信号を発している。
「マリオぉ……」
大好きなヒーローの名前を呟くももちろん返事は無い。知らない世界にひとりぼっちなのがどうしようもなく心細くて、ガタガタと震える腕をぎゅっと掴む。
進まなきゃ。ここにいたって誰も助けてはくれない。
力の入らない足でなんとか立ち上がって一歩踏み出した、その途端。
「わひゃっ!?」
べしゃり。足首を後ろに引かれて、地面へと盛大に鼻をぶつけてしまった。
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