オタレイ①「レイン」
熱を帯びた声に、肌が粟立つ。自分の意思に反して無防備に飛び出した耳を、レインは両手で隠そうとした。が、それは叶わなかった。両手首を一纏めにされて、頭上に押さえつけられた。
魂現を晒すことは、斑類にとっては恥ずべきこと。裸を晒すようなものだ。それなのに、無理やり引きずり出された。恥ずかしさと苛立ちの相反する感情がレインの心に渦巻いた。
「離せ!」
必死に抵抗しても、そんなものは軽く押さえ込まれる。重種のオーターの前では、軽種の自分は無力だということを改めて理解させられる。けれど、それでも抵抗せずにはいられなかった。
眼鏡の奥で細められた眼差しが、縋るように向けられる。やめてくれ、とレインは思った。そんな目で見ないでくれと。
「……オレとあんたでは、住む世界も立場も違う」
同じ神覚者だとしても、元々貴族だったオーターと、神覚者となり貴族地位を手に入れた自分では住む世界が違う。
オーターの腕を掴んで勝ち誇ったようにこちらを見ていた、猫又の中間種の女を思い出す。貴族は家の断絶を最も嫌う。だからこそ行われる、金を払って子を成すブリーリングという行為。あの時、オーターがどんな顔をしていたか、レインは思い出せなかった。
自分に愛を囁いたその口で、どんな風に彼女に愛を囁いたのか。自分の触れたその手で、どんな風に彼女を抱いたのか。
きっとひどく情けない顔をしている。見られたくないのに、両手を押さえられているため顔を隠すことも叶わない。
「レイン、お前は勘違いをしている」
「なに、が」
「私はあの女を抱いてはいない」
家のことなどどうでも良いとオーターは言う。
眼鏡の奥の円輪を描く瞳が、その瞳孔の形を変える。晒された喉元に軽く牙が立てられ、レインは息を呑んだ。オーターの頭には、艷やかな黒を纏う豹の耳。晒された魂現と共に、きつく抱き締められて包まれる匂いに頭の芯がぐらぐらと揺れた。
「私にはお前だけだ。だから、どうか私を拒絶しないでくれ」