カナシイカナシイ病①「ッ、」
アダムは指先をビクッと震わせた。
目を普段よりも大きく開いて、舌を喉の奥へと押し付ける。
絶対に余計なことは言わないように、神経を刺激しないように、息を顰めたままゆっくりと背中を摩る。
「ウッ、うぅ。ぐす、」
「………」
「ゔ。ごっ、ごえんっ。」
「………」
「ンッ、ごめ、ヒッ、ゔぅ」
「………」
ルシファーは大きい抱き枕にしがみついて泣いていた。
泣きたくないのに涙が止まらず、泣いているせいで上手く動けないことに悲しくなってズピズピと涙を流す。
泣いているせいで目の下が痛み、呼吸が辛くて悲しくなる。
悲しくなると涙が出て、この世の終わりみたいな気分になって頭が鉛みたいに重く痛む。
涙を流すのが悲しくて、悲しいのが嫌で涙を流す。
このようにしてルシファーは悲しみの無条件連鎖にハマったまま抜け出せなくなっていた。
何かを思考したくても、泣くことに全てのエネルギーを持っていかれて、まともに頭を使うことも出来ない。
馬鹿になった脳みそは、目の前の抱き枕にしがみつくことだけに一生懸命になっていた。
布地が自分の涙と鼻水と汗でぐちゃぐちゃになり、顔にベタつく感覚が気持ちが悪くて涙を流す。
ルシファーは今、何も考えられないほどに深い悲しみの波に飲み込まれていた。
それはなぜか。
「ふっ、うう、ッウ、」
「………」
アダムは額に汗を浮かべて困った。
ルシファーの抱き枕に徹しながら、ベッドに寝そべって、その小さな背中を撫でてやる。
ギッとしがみつかれて、ルシファーの膝が股間にめり込む。これが信じられないぐらい痛くて、ブロンドをぶん殴って引き離したくなったが、アダムは必死に歯を食いしばって耐えていた。
しばらくすると泣き疲れて体力が底を尽きたのか、ルシファーが死人のようにガクッと脱力した。胴体を締め付ける手脚の力がゆっくりと抜けていく。次第に咽び泣く声も、しゃくりあげる声もなくなると、アダムは神経を尖らせたまま、細心の注意を払ってルシファーを引き剥がした。
一昨日気絶したルシファーを自分の上からコロンッとベッドに移した瞬間、両方の目がバチッと開いて振り出しに戻ったことがあったのだ。
「……!!」
「、スー…、スー、」
「(よ、よかった…)」
ルシファーに引っかかってアダムの服がわずかに捲れる。一日中、手加減なしに抱きつかれたせいで、アダムの腕や背中には青あざや噛み跡がついていた。
「………ふぅ、」
十分すぎるほど時間をかけてルシファーを寝かしつける。寒くならないように布団をやさしく被せ、ティッシュで顔を優しく拭ってやる。寝心地が悪いとまた訳もわからずエグエグ泣き出して面倒なことになる。
アダムはソー……と離れて部屋を出ると真向かいの部屋へ向かった。
今アダムの部屋はルシファーの看病で使ってしまっているのだ。
⭐︎
「ア、ふっ、ずぴ、」
「ほら、飯だ。口に入れるからな」
「ズッ、ぅう、」
「噛めるか。ゆっくりで良いし、こぼしても良いからな」
「ウッ、ア、アダムッ、」
「嫌だな。噛んだら飲み込めよ」
「ヴゥ、ヒッ、」
ルシファーは温かく柔らかい物に抱きしめられながらご飯を食べていた。チャーリーが作った林檎粥である。蜂蜜と胡椒で味付けされたモーニングスター家お手製の粥。これをちいちゃいスプーンでちみちみと食べさせられていた。
自分で食べたくても体がだるくて上手に動かせない。このことに涙を流す。自分でご飯も食べられないことに悲しくなって涙を流す。
チャーリーが作ったご飯は嬉しいが、しかしルシファーは今林檎粥の気分ではなかった。
娘と疎通が出来てなくて涙を流す。
それでもチャーリーが作ってくれたから頑張って食べる。
でもやっぱり本当はダブルチーズバーガーが食べたくて、悲しくなって涙を流す。
誰が食べさせてくれているかは認識できていない。なのに自分の世話をさせてしまって、迷惑をかけてしまって悲しくて涙を流す。
極め付けに、涙を流すことに悲しくなって涙を流す。
ルシファーは未だ悲しみの渦に手も足も出せず呑まれていた。
「食い終わったら、歯磨くからな」
「ッウ、ヒッ、ヴグ」
「ゆっくり飲み込め。時間はたっぷりある」
「ズッ、アダム…アダム、」
「はいはい。悲しいな」
「ヴッヴッ、ズビッ、ゴベ、」
「悲しい悲しい」
「ゴっ、ゴベ、ゴえん」
「涙拭くから、上向け」
「ダムッッ、ゴベンネッ、ヴゥウッ」
「よし、食べ終わったな」
【説明】
アダムは地獄に落ちてからルシファーと喧嘩ばかりしていた。ルシファーは元気一杯アダムをもちもちこてこていじめ、アダムもボコスカベキメキ暴れて反抗する。ただでは転ばないファーストマンであった。
そんなある日、ルシファーはふとアダムがどうして地獄に来たのか考えてしまった。それからしばらくの間ルシファーは自己嫌悪と倦怠感のるつぼにハマってしまったので二人の喧嘩は治り、地獄はちょっとだけマシになった。
しかし事態は一転する。
ルシファーがいつまで経っても鬱から抜け出せなくなったのだ。その上自分のことが一切合切手につなくなり、チャーリーが話しかけても涙を流してちっとも動かなくなった。
この頃、なぜかルシファーと同様の症状を訴える罪人がプライドリング中で現れはじめた。
「これは!…カナシイカナシイ病よ!」
この事態に地獄のプリンセスは緊急事態宣言を発令した。
カナシイカナシイ病。
ある日突然、吹き飛んでいたはずの頭のネジが戻ってきて、全ての感覚がシラフになる病だ。ただこのネジは正しい形をしておらず、髄質までを強引に刺激すると、脳一帯に悲しみの種を撒く。こうなると薬物に頼ろうが、衝動に任せようが無駄で、背骨を掴んで引き抜くような悲しみに全身が支配されてしまう。
すると、今までどうでも良かったのに、両親が悲しむような気がして悪事も働けなくなり、小さな失敗が一生涯自分を苦しめる十字架になり、自分がすることの全てがこの世の迷惑になるような気になるのだ。
末期症状になると無気力感が増幅し、感情の機微にすらカナシクなって動かなくなる。自分のことが何もできなくなり、考えることすらできなくなるのはこの地獄では致命傷である。
しかも厄介なことにこれは病というぐらいなので不用意に患者に近づけば感染するのだ。
なぜ地獄でこのような病が存在しているのかといえば、大昔に天国がばら撒いたからである。エクスターミネーションが始まる前、天国は増えつつある罪人を減らす手段としてウィルスを発明し、ばら撒いた。バイオテロである。
最初は罪人たちもこの病に恐れ慄き、パニックを起こしてその人数を減らしかけた。
しかし極悪人は知恵を持っているので、すぐさま動いて病人の隔離、街の洗浄を徹底した。病人を治すための隔離ではなく、消すための隔離である。問題は断つのが大切らしい。
その頃の極悪人には容赦も慈悲も本当になかったので、決断に迷うこともなかった。感染した罪人をすぐさまナタで殴って減らした者もいた。
こうして感染を強引かつ迅速に抑え、カナシイカナシイ病作戦は失敗に終わった。
ちなみにこの時ルシファーは屋敷でリリスと相撲をしていたので、こんな病が罪人の間で流行していたなんて気がつきもしなかった。
作戦失敗の後、この地獄絵図は上位天使の会議で放送された。その結果エクスターミネーションが代替案として持ち上がったのだ。問題を断つことにしたのだ。
しかしこの病、天国の想像に反して罪人だけでなく、地獄に元々いた悪魔たちにも感染を広げた。罪人たちのいる階層では下火になっていたが、他の階層ではパンデミックとなっていた。特に打撃を受けたのは色欲と物欲の階層である。悪魔の生き交いも多く、感染があっという間に広まると、それぞれの事業が立ち行かなくなった。
この事態に大罪たち(ルシファーを除く)は初めて共同でこの「カナシイカナシイ病」の対処に取り組み、ワクチンの開発や薬の開発に働いた。
その甲斐あってなんとか感染は治ったが、「カナシイカナシイ病」を根絶させることは出来なかった。大罪たちは定期的にこの病のワクチンを悪魔たちに接種させ予防に努めているが、永い5分間を過ごすルシファーはこの事を知らない。普通にむかついた大罪たちも特効薬やワクチンをプライドリングに流さなかった。
プライドリングにいるインプや他の悪魔たちは他の階層に渡る関係でワクチンを接種していることが多いが、それが出来ない罪人はただのとばっちりである。
そして今、ルシファーは鬱で精神も身体もすり減らした結果カナシイカナシイ病の末期症状に至っていた。
チャーリーはこの病について元カレくんから詳しく教えてもらっていた。「こあい病気だから気をつけてね?」とベッドの上での小さな話題として上がったのを覚えていた。「今そんな話する?」と思ったことも同時に思い出したが、このおかげで病に対し迅速に動くことができた。
チャーリーはルシファーの発病に気がつくとルシファーの屋敷を罪人のための隔離病棟に指定した。ホテルは今ルシファー専用の隔離病棟になっている。
なぜならホテルよりも単純に屋敷の方が隔離をするのに向いているからだ。
食べ物も屋敷内の植物園で自給自足できるし、立地もプライドリングのど真ん中、何より清潔で空調などの設備も充実している。
チャーリーはホテル宣伝のチャンスを捨て、罪人のためにルシファーの屋敷を隔離病棟に指定した。また、ヴァギーを中心としたホテルメンバーを屋敷の手伝いとして送り出した。
このカナシイカナシイ病、天使は罹患しないと言われている。だからこそ、チャーリーはヴァギーをホテル代表として医療チームに参加させた。チームのなんたるかを知っているヴァギーはきっとうまく働いてくれるだろうと。
パートナーの期待に応えるため、ヴァギーは屋敷にいた謎の作業着の悪魔と共に罪人の治療にあたっている。
「クヨクヨしない!ここでちゃんと治してホテルに泊まりに来なさい!」
「果物をどうぞ。植物園で休んでください。日が差して温かいですよ。」
「ほら、焦らなくていい。ここならルシファーの加護でヴァルの追手も来ないから」
「あー、酒はないが美味い食い物ならたくさんある。治すためだ。たらふくもらってけ」
「アナタ治らなかったら悪い子ね!アハハッ」
ちなみにルシファーも天使であるが、TVキャスターに悪魔のトップと呼ばれていたし、元々病気になっていたようなものである。
ルシファーと付き合いの長い作業着の悪魔も清き流れも濁れば淀むと呆れた顔で話していた。
ヴァギーたちの甲斐あって罪人たちの症状は比較的軽く止めることができていたが、ルシファーは違う。
長く気づかれなかったせいで末期症状の何もできない、何も考えられない状態に陥っている。
そしてなぜかアダムが体を張って看病していた。自分がすることが当たり前のように全力を尽くしている。
更生の一歩としては素晴らしいがその理由は誰もわかっていなかった。
【終了】
「ズピッ。ズーッ、ッヒ」
「鼻かもうな。チンできるか」
「ヴ、で、でぎない」
「あ、やべ」
「でぎない、でぎない、できない…」
「そうだな、難しいな。じゃあ…これ飲め」
「、あうっ、んぐ」
アダムはルシファーの多分鼻的な場所を軽く拭き取ると温かいミルクをサジですくって飲ませた。体を温めて詰まった呼気の通りをよくしようと思ったのだ。しかしルシファーは顔を背けて口の下から喉にかけて白い線を垂らす。飲みたくないらしい。アダムは根気強くルシファーの世話をした。その目の下には疲労が色を変えて溜まっている。
「アダム…アダム…、」
「顔拭くぞ」
「アダム…」
「綺麗にしような」
「うぅ、う〜…」
ルシファーは一日中うわごとのように「アダム」と呟く。しかしこれは自分の頭の中の「アダム」という単語を読んでいて、目の前の甲斐甲斐しいアダムは見えていない。というかルシファーは今、目が見えていない。泣きすぎて視界はかすみ、瞼はパンパンに浮腫んでいる。
だから今誰に世話されているのかわかっていないし、自分の状況も理解していない。ぼんやり鈍った意識の中で、ただひたすらバケツで叩きつけられるような悲しみに襲われていた。
爪の先まで悲しみで支配され、もはやカナシイが何なのかすらわかっていない。自分のことだって朧げである。それでも時折、曇天の日差しのように強かな音が魂に触れてルシファーを生かそうとしてくれた。
「アダム、ごめん…」
「もう寝ような」
「あう、」
「苦しくない?熱くない?」
「ズ…」
アダムがルシファーを抱えてベッドに倒れる。頭を撫でると髪がベタついていて、風呂に入れないとな…とぼんやり考える。しかし寝かせなければルシファーの体力が持たないので、一旦今は背中を摩ってやり過ごす。
布団がじんわりと温まって、ルシファーの腫れた目から涙が一つ溢れる。これを見届けてアダムはベッドから静かに抜け出した。
食器やゴミをプレートに乗せて、真向かいの部屋に向かう。
「はぁーっ、」
ドアノブを消毒し、使った食器も着ていた服も全てゴミ袋に入れると、アダムはバスルームに向かった。
熱いシャワーを頭から被り入念に洗い流す。
最初に着ていた天使のローブはとっくに燃やして塵にした。ルシファーの発病が発覚した日、移動させようと持ち上げた瞬間、ローブに信じられない量のゲロを吐かれたのだ。
タオルで水気を拭い、大量生産品の上下グレーのスウェットに身を包む。適当に肌をケアして、白い普通のマスクをつけるとタオルもゴミ袋に入れて硬く縛る。念を入れて袋を二重に縛ってから、アダムはホテルラウンジへ向かった。
「…誰かいるか」
静まり返ったラウンジ。普段から賑わっていたわけでもないが、誰もいないのは奇妙な気分である。
「?、誰もいないのかー」
「ココよ!」
振り返ればチャーリーが通路に立っていた。マスクをつけて、トレーに湯気の立つ器を乗せて運んでいる。
「ご飯まだよね?」
「いや?さっき食わせたぞ」
「…あなたのご飯よ」
「あー」
アダムはぼんやりして、トレーを受け取ろうとする。しかし片手がゴミ袋で塞がっていたので諦めた。
「………」
「ああ、バンビか。はい」
ふとアダム影が不自然に揺れ、ツノの生えた大柄の影に分裂した。アラスターの魔法である。
アダムは影にゴミを手渡してふらふらと手を左右に振った。影が簡易的に作った焼却場までゴミを運んでくれるのだ。
「ハハっ、燃やしとけーあハハはは、」
「…アダム、大丈夫?」
「ああ問題ない。症状はあまり変わりないが、ルシファーはよく眠るようになったよ。飯もちゃんと食うし…まあ溢しはするがな」
「そうじゃなくて、」
「え?あぁ、林檎粥は気分じゃなかったみたいだ。多分あの顔はチーズバーガーの顔だ」
「違くて…えっと…」
「んー?」
隈の染みついた目にグーッと微笑まれ、チャーリーは口ごもる。これを不思議に思ったアダムはトレーを代わりに持ってラウンジへと運んだ。
「私が持って行くから、向こうで食べようかな」
これを言われた瞬間、チャーリーはアダムが限界を迎えていることに気がついた。
対外向けの優しい笑顔をアダムから向けられたのは初めてだ。
多分バグっているのだ。人にツンケンするよりも滑らかに受け流したほうが判断の余地がなくて楽である。アダムは今、自分のキャラも保てないくらい疲れているのだ。
どうしてアダムがそこまでしてルシファーの世話をしてくれるのか。チャーリーにはこれがずっとわからずにいた。
「中華そばか、塩気が効いてていいな。美味しいね」
「…うん」
「お嬢ちゃんが作ったのか?」
「いいえ、チェリーが…」
「そうか、チェリーか。職人顔負けだな。店を出した方がいい」
「あ、アダム…今日は何曜日かわかる?」
「木曜日。お嬢ちゃん、薬の方はどうなった?」
「え。まだ交渉中で…」
「そうか、大変だな。バンビは上手くやってるのか?」
「アラスターなら大丈夫…アダム、ごめんなさい。パパのこともあなたに頼り切りで」
「カナシイカナシイ病。いかにも天国の奴らがつけた名前って感じた。この地獄で唯一天使である私とヴァギーだけが罹らないなら、こうするしかないだろ」
「でも申し訳なくて」
「別に。気にするな、私は気にしていない」
「あのねアダム、それで、」
「ご馳走様」
「え!早くない?!もっと休みなよ」
アダムは中華そばのスープまで飲み干すと「だってルシファーが起きるかもしれないだろ」と微笑んで立ち上がった、
「大丈夫だ。大丈夫。ルシファーは良くなるよ」
「アダム!私はあなたが心配で…」
「大丈夫だお嬢ちゃん。全部うまくいくから」
「あぁ、アダム!!」
呼び止めたが、アダムは止まらない。何が大丈夫なのか、どうして尽くしてくれるのやはりかわからない。
最後に見た時、アダムは父と喧嘩をしていた。アダムは父を恨んでいる。言葉を選ばずにいうなら父に死んで欲しいと思っているはずだ。
アラスターが前に笑顔は武器になると言っていた。笑っているからと言って心もそうであるとは限らないとも。アダムの笑顔はどんな意味があるのだろうか。
「アダム…どうして、」
チャーリーは暗闇に向かう背中を追いかけようとしたが、懐に入れたスマホが彼女を呼び止めた。見ればロージーからであった。
プライドリングではカナシイカナシイ病に対する薬がない。
他の階層にはあるが、ルシファーの件があって譲ってもらえずにいる。チャーリーは娘であるが大罪ではない。交渉の席にすらうまくつけずにいた。
そこでチャーリーは大罪ではなく、上級悪魔たちに協力を依頼した。
感染状況は甚大である。
プライドリングでは今、史上初めて上級悪魔たちが手を取りあって薬の発明や罪人たちの治療に専念している。チャーリーとアラスターはこの中心に立っていた。
つまり、自分の父親に時間を割く暇は彼女にないのである。
「ハーイ、ロージー」
『ハーイ、チャーリー!あのね、アラスターとヴォックスがまた揉め始めたのよ。今度は医療施設の宣伝はラジオでするか、テレビで流すかですって。それでね、悪いんだけどそろそろカミラが大声を出しそうだから戻ってきてくれる?』
「アラスター…わかったわ、すぐに戻るから」
通話が終わって見てみればアダムの影はすっかりなくなっていた。スマホをギュ!と握りしめる。
床にアダムの使った食器類がニ重にしたゴミ袋に入れて置かれていた。
続く