時には、こんな戯れも「俺、童貞じゃねえよ?」
「マジっすか、黒尾さん!? 信じてたのにっ……‼」
黒尾が返した言葉に、部室内に山本の悲痛な叫びが響き渡る。
――最悪だ。
にやけた顔が一瞬此方を見たのに気が付き、研磨は大きく表情を歪めて返した。それに、悪い笑みを浮かべたからヒヤリとしたが、高揚するメンバーの目は二人に向かない。話に参加するのも嫌だったので、我関せずの体を貫き、ワイシャツへ腕を通した。
何からこの手の話題になったのだったか?
……確か、いつもの山本による女子マネ希望の訴えが、発端だった気がする。どうしてそんなに拘るのかと夜久が突っ込み、『日々のサポート、そして応援が欲しい』と、同級生は答えていた。それに、リエーフが「クラスの女子が次の練習試合、見に来てくれらしいっす!」と話したあたりから、妙な方向へ進んだのだ。発狂した山本が、何故かバレンタインのチョコレートへ話題を移す。それに犬岡までが参加を始め、付き合った女子の話から経験に及んで――。盛り上がりから反比例するように、山本から生気がなくなるのが分かった。適当なところで終わらせてしまえばいいのに……。女子に話し掛けられない男が、どうして競おうと思ったのか?
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