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    お前の背後

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    お前の背後

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    CP描写無し/🧲と✉の小咄だけど🧲中心で✉は少しだけしか出てきません。

    文通、そして幸福論「キャンベルさんにとって幸福とはなんですか?」
    不意を突かれた気分だった。
    幸福、確かに幸福とはなんだろうか。
    ある人は家族で過ごすことだと答えるだろう。
    またある人は何事もない日常だと答えるだろう。
    だがそれらは僕から見れば全て戯言。むしろ馬鹿馬鹿しい寝言の様なものだね。
    なら僕にとっての幸福とは?
    答えは極めて単純、裕福であることだよ。
    家族で過ごすといってもお金がかかるだろう?まず全員で住む為の土地代、食事代、洋服代…。何事もない日常だってそうだ。何事もないというがそれはきっと雨風がしのげる家があって、お腹いっぱいに食べれる物があって、あたたかい布団に包まって眠れる日常であることが前提だろう。だとすれば同じ様に大金が必要さ。ほら、もうわかるだろう?幸福に生きる為にはお金が必要なんだ。お金があればあるほど、幸福になれる。
    だから、僕にとっての幸福は裕福であることだ。
    ぽたり。
    黒いインクが紙に垂れ落ちる。まるで自分の野心が煮溶けた様にみえて吐き気を覚えた僕は、一息つこうとペンを置くことにした。この奇妙な文通が始まったのはほんの数日前。たまたま試合で一緒になったポストマンこと、ビクター・グランツが他の人とよく文通していることを耳に挟んだのが始まりだった。とはいえ僕がどういった経緯でそれを知ったのかはもう覚えていない。ただ、そんな彼のことを風変わりな男だと感じたのは覚えている。そして、今もその感覚は変わらない。それどころか恐怖を抱き始めている。ここ数日間彼と何通かやり取りをしたがまるで…。
    まるで、秘密を受け渡してるように感じるからだろうか?ああ、多分そうだ。寡黙な僕がこうして他人に思考をあっけからんと話すのは本来ありえないことなのだから。しかし、彼はそれを成し遂げてしまう。手紙という形で。そしてこれは僕だけではなく彼と文通しているという他の人も同様なのだろう。だがこの底知れぬ恐怖に気づいているのはきっと僕だけなのかもしれない。先の見えない地下にいたからこそ、気づいてしまったこの恐怖。このまま進み続けてもきっと金になるようなものはない。それでもゆっくりと、招かれるように歩み寄ってしまうのは彼の語る「手紙を通して行われる秘密の共有という幸福」に引き寄せられてしまうからだろうか。
    裕福以外の幸福など、無いはずなのに。
    ため息をつき、再びペンを握る。こうして僕は恐れながらも彼と文通を続けてしまうのだろう。
    …幸福を求めるが、故に。
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