レイリーの話①何月何日かも思い出せないのに、はっきりと覚えている。
ドレッサーがきらいで、ハンマーで割っていたところを母に見つかって、どなられたこと。
泣いているわたしを、弟だけがなぐさめてくれたこと。
わたしの記憶に父親はいない。写真立ての向こう側には、ちゃんと4人が写っているのに。
鏡は私の汚れた部分をすべて暴いてくる。気がついたときには鏡を見ることはできなくなっていた。
母はいまでもそれを理解してはくれないのだ。
それどころか、わたしを友人の母に押しつけて、自分は仕事にのめり込むばかりで、友人宅に来た様子もなさそうだから。
でも、わたしは今、しあわせだ。
わたしには彼女がいる。あこがれの存在と同じ屋根の下、いっしょに暮らせるなんてどんな夢物語なんだろう。
348