クラピカと一番仲が悪い娼婦(ホテルでの緋の眼の取引で心と身体を消耗し、その帰りに組の娼館へ仕事をしに行ったら一番仲悪い娼婦に「おいブ◯」と言われて思わず頭に血が上った)
「貴様たちは自身の美醜だけで客を得ていると思っているのか?」
「は? なめてんの? 客はあたしらの顔を見てねーの知ってんだよ」
「少しは頭を働かせて仕事をしているようだな。ならばこの後の話は早く済みそうだ。思考が浅い貴様でも分かるように説明すると…」
「あんたが裏で色々やってるからあたしたちに仕事が入ってくるんでしょ? よく分かんないけどさ」
「!」
「だってあんたバカじゃないじゃん。バカじゃないならブスって言うしかなくない? だってあたしのママ、あたしを怒鳴る時バカとブスしか言わなかったから……」
恥じらう様子もなくそう告げる娼婦。
(………知らなかったのか、他に罵り方を……)
((ディノハンターを辞書を片手に一生懸命読んだり、外の世界に行く為にテストを受けたあの頃の自分を少し思い出した))
((思い出した後にさっきホテルで起こった出来事が頭をよぎった))
((その後に言葉を、世界をまだ何も知らない彼女の目を見た))
(そうか……だから彼女とは歩み寄れなかったのか。彼女を見ると、オレは自分から目を逸らしたくなるから……)
その後クラピカは時間を見つけて彼女に文字や文化や知識を教えることになり、この娼婦とのわだかまりが解けた。クラピカのおかげで彼女はディノハンターの作者が書いた短編も一章だけだが読めるようになった。クラピカはまだ緋の眼の取引の為にホテルに出入りをしている。そのことについて彼女は本当に知らないのか、それとも知らないふりをしているのか、クラピカは彼女に聞こうとはしなかった。
一般常識を充分に得た彼女はノストラード組から旅立つことになる、その前日の夜。
「あんた結局おとこ? おんな? 明日あたしの最後の仕事が終わったら一緒にお風呂入って同じベットで寝ようよ。おんなだったら……ううん、おんなでもおとこでも、ずっとあたしの友達でいて……」
彼女は最後の仕事へ向かう途中、組同士の闘争の流れ弾で亡くなってしまった。彼女の鞄の中には仕事道具の他に、彼女の拙い筆跡で「ひのめについて」と記されていた封筒と、ディノハンターの作者の短編があった。
「事故」現場に立ち合ったクラピカは、そのまま緋の眼の取引の為に指定されたホテルへ足を運ぶ。取引先の相手がいるホテルは、彼女が向かうはずだったホテルと同じだった。
クロロにとっての「女友達」…まるでサラサのような存在と対になる、クラピカにとっての「女」との話。