むなこい 夕食を終えたころに携帯が鳴って、アメリカはソファに腰掛け、満たされた腹をさすりながら待ちびとの電話を受けた。
最近はフランスの方からよく電話をくれる。
アメリカの携帯の着信履歴に残るフランスの名が増えていくたび、すこし前は考えられなかったと不思議に思いつつも、アメリカは宝物がひとつ増えたように嬉しくなってしまう。
フランスはここのところ就寝前に掛けているようで、電話越しには時たまどこかのホームパーティーの終わりを知らなそうなにぎやかな笑い声が漏れ聞こえてくる。そんな日は、俺のところはこういうものさと苦笑しつつも、やはり眠るに眠れないのか、フランスはいつもよりも長電話に付き合ってくれる。そして眠気に限界が訪れ、鈍い反応を返すようになるまでアメリカの止まらないお喋りに、うんうん、と応えるのだ。そのいまにも微睡みに身を預けそうなとろりとしたフランスの声音が可愛くて、アメリカはつい、そろそろ寝るかい、という終了の合図を出し渋ってしまう。
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