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    0chamidori

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    本筋に1ミクロンも関係ないけど気づいたら生やしてたフラアルシーン(6時間の時差カプ)

    むなこい 夕食を終えたころに携帯が鳴って、アメリカはソファに腰掛け、満たされた腹をさすりながら待ちびとの電話を受けた。
     最近はフランスの方からよく電話をくれる。
     アメリカの携帯の着信履歴に残るフランスの名が増えていくたび、すこし前は考えられなかったと不思議に思いつつも、アメリカは宝物がひとつ増えたように嬉しくなってしまう。
     フランスはここのところ就寝前に掛けているようで、電話越しには時たまどこかのホームパーティーの終わりを知らなそうなにぎやかな笑い声が漏れ聞こえてくる。そんな日は、俺のところはこういうものさと苦笑しつつも、やはり眠るに眠れないのか、フランスはいつもよりも長電話に付き合ってくれる。そして眠気に限界が訪れ、鈍い反応を返すようになるまでアメリカの止まらないお喋りに、うんうん、と応えるのだ。そのいまにも微睡みに身を預けそうなとろりとしたフランスの声音が可愛くて、アメリカはつい、そろそろ寝るかい、という終了の合図を出し渋ってしまう。
     その日の電話口の背後からは、静かな曲調のシャンソンが聞こえてくるだけだった。フランスが自室で流しているのだろう。
    『……そういえば来月──12月に入ったらお兄さんのところにまた来ない?』
    「えっ、いっ行く!」
     フランスから誘いがくるとは思っていなかった。
    『即決かよ。いや、いいんだけどね。俺まだなにも言ってないぞ』
     笑い混じりのフランスの声がする。
     アメリカは思わず天井に腕を持ち上げて大きな喜びを表現していたが、その腕はすぐにずるずると膝まで落とされた。
    「あ、でも12月か……君のところも寒いだろ……?」
     アメリカは寒さが大の苦手だ。この時期はコタツでコタツムリ暮らしを望む日本の気持ちがよく分かる。
    『冬はどこもそれなりに寒いものでしょー。実は友達がさ、ストラスブールのクリスマスマーケットに店出すらしいのよ。旧市街の街並みが可愛いところでマーケットも規模がすごいの。お前、他所のマーケットあんまり行ったことないだろ? よかったらどうかなって思ったの』
     フランスとクリスマスマーケット。
     アメリカのところも毎年クリスマスの季節は街中が盛り上がる。だが、クリスマスの装いで輝く見知らぬ街をフランスと歩き、彼と一緒に寒空の下で見るイルミネーションは、いっそうロマンチックに違いない。
     ──デートじゃないか!
    「それを聞いたらますます行きたいぞ! そう、プレッツェル食べようよ!」
    『あははっ結局食い物かよ』
    「も、もうっ、それだけじゃないんだからな」
    『へぇ。それだけじゃないって他にはー?』
     ──君と一緒にいたいからだよ。
     アメリカはその心の声を口にはできなかった。
    「君には内緒だぞ……」
     もしほかの誰かにこの恋心を知られてしまっても、フランスにだけは知られるわけにはいかないのだ。
    『……なぁにー。最近こんなに電話してるお兄さん相手にいじわるだなぁアメリカ』
     電話越しのフランスの声のトーンがすこし寂しそうなものに変わってアメリカは慌てた。フランスを傷つけるつもりはないのだ。
    「ちっ、違うんだ、たいしたことないけど言うのが恥ずかしいだけで! そうフランス、君そろそろ寝たほうがいいぞ! あ、12月は絶対に行くからな!」
    『ははっ……わかってるって。楽しみにしてるよ。ボンニュイ』
    「うん……俺も楽しみだぞ。いい夢を、フランス」
     電子音ひとつであっけなく、すぐそばで聞こえていた声が何万ヤードと離れてしまった。微かな寂寥感がアメリカの心を重くする。
     通話を終えたのに、まだ話し足りない。明日の夜もまた話せるだろうか。明日も、明後日も。毎日フランスが眠る前に自分と電話をしてくれると思うと、自身が本当にフランスの特別な相手になれているように思えて、アメリカの気分はすこしだけ上を向く。
     そして。
     ──来月はフランスとクリスマスマーケットだ。
     鐘の音にも類う歓喜の響きだった。
     うきうきとした心持ちになってゲームの続きをすると、数日クリアできずにいた中ボス戦をするりと越えられ、最終決戦間際まで進めることができた。アメリカは鼻歌を零しながらシャワーを浴びてベッドに沈む。
     翌朝になってもその待ち遠しさは続いていた。
     職場でアメリカが、クリスマスカラーに彩られた可愛い街並みや、そこで笑い合う自分達の姿について想像を膨らませていると、近くにいた秘書は慣れたもので「なにか良いニュースでもあったんですか」と微笑んでいる。その言葉に「うん、最高のニュースだよ」と照れ笑いを返しながら、早速休日の予定を入れるように頼み、アメリカは胸を踊らせるのだった。
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