知らない貴方知らない間に黒い影が自分の隣に立っている。
召喚した訳でも無く、消える時はいつでも自分の影の中へと消えていく。
E級ハンターである旬は、ヒーラーでも無く戦闘にも向いていない。あまりにも弱いため、人類最弱と馬鹿にされる日々だった。
ふと気づいた時には、その影の頭の上当たりに『イグリット』という名前が浮いており、自分に敬意を払って膝を地面に着かせていた。
「えっと……誰かの召喚…?」
『――――』
一応言葉は理解するようで俺の一言一言に頭を上げては横に振る。
「うぅん……このまま外に出るってわけにも………あ」
黒い影が隣で歩いているのは迷惑そうだなと考えていると、イグリットという影はするりと地面に溶け込み、自分の影の中へと入って行く。
「……出来るならそう言ってくれよ…」
ぽりぽりと後頭部をかきながら、リュックを背負い、心もとないナイフと片手にE級ダンジョンへと向かった。