めんどうなやつら 鉢屋三郎は運転席に付き、苛立ちを堪えていた。
ドリンクホルダーに入れたコンビニのコーヒーを啜る。家を出てからすぐに買ったコーヒーは、半分ぐらいを飲み干したあたりから一気に冷えてきて、いまでは香りもなにもない苦い液体へと化している。しかし、なんとなく意識の裏にある眠気を抑えるにはこれくらいの方が丁度いいのだろう。
指の腹でハンドルを叩きリズムを取りながら前の景色を睨む。夜の帳を押しのけるLED群。道路に続く赤い灯。そしてなによりも車道にはみ出さんばかりの人、人、人。先ほどから通りすがるテンションが上がりまくった人達が身体を左右にぐねぐねしながら車体にぶつかりそうになっては、「おい、気をつけろって!」と笑い声が聞こえてくる。色々な意味でぶつかってこないことを祈るしかない。
9521