かなかなと鳴く蝉の声。
傾いた太陽が、立派な入道雲を橙色に染め上げる。
軒先に吊るされた林檎飴のような風鈴が、風に吹かれて時折音を鳴らす。
背を付けた[[rb:檜 > ひのき]]はひんやりとしていて、夏の暑さに滲んだ汗でぺたりと肌に吸い付く。
ミスラとオーエンは、縁側に寝転がっていた。縁側に寝転がって、暮れていく夏の空をぼんやり眺めていた。
「俺たち、どうしてこんなところにいるんでしょうね。こんな、何もないところ。」
寂しげに鳴くひぐらしに混ざって、ミスラがぽつりと声を落とす。
「は? おまえが連れてきたんだろ。」
「そうでしたっけ。」
「そうだよ。僕は暑いし虫だらけのところなんて嫌だって言ったのに、おまえがいきなり喧嘩を吹っかけてきて、無理矢理……。」
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