どうか君よ※雰囲気で読んで欲しい
白いローブを羽織り口元だけを見せている男は、目の前に立っている黒髪の少年を見てふっと微笑みました。
〝君はこのあと生まれ変わるから、この機会に特別な人間にしてあげる〟と言ってあらゆることを提案してきた男に対し、いらないと突っぱねたからです。
一人で生きていかないように、どこか欠けていてもそれを補って誰かと支え合っていけるように。だから、〝特別〟はいらないと言った少年のまっすぐな目。琥珀色のそれ。
変わらないな、と男は思いました。昔から優しい子で、自分より誰かを愛せる子でした。この少年も〝そう〟であると、男は知っています。
提案したあれこれを全部拒否されたのは少し残念でしたが、普通の人間になった少年とはそろそろお別れの時間です。最後に転生の魔法をかけて、少年の寝癖がついた頭を撫でました。男が知っている一番好きな撫で方を真似たのです。
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