蟲の道夏になるとライオスは無性にわくわくしてしまって、それは多分、故郷では夏というものは本当に短かったからだと思うのだった。
シュローの故国に来てから、こんな夏もあるのか、とライオスは思った。
湿気で遠い山並みが青紫に霞み、陽炎が白っぽい砂の畦道に立つ。そんな、田園の風景は、ライオスの異国情緒を掻き立てる。
夜になれば、田園の中にある、二人が貸し受けた離れは田んぼからの風が涼しくて、カエルの大合唱が聞こえた。
カエルを狙って蛇が来る。それを気味悪いと思ったが、シュローは笑って水神の遣いだと言っていた。
寝巻きはユカタという奇妙な着物で、ライオスには、キモノとどう違うのか区別が付かない。
カヤと呼ばれるテントを張って、カという吸血虫から守られて眠るのは不思議な気分だった。
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