赤い指先/荒鳴「ねぇ、荒北くん、その指どーしたの?けが?」
「絆創膏とか、あるよ?いる〜?」
2限目の講義、昼食前で皆の集中力も削がれ始めた講義終了間近、そんな声が聞こえ、横に2つ離れた席に座るその男に視線が向く。
「ぁ?指?」
どうやら本人もなんの事やら気がついていないようで、自身の指を確認している。
角度的にこちらから指先は見えないが、男の口から小さく「あっ」という声が聞こえた。
「ダイジョブ、ケガじゃないから〜、あんがとネェ」
声をかけてくれた女性に対し、ヘラりと笑い、礼を言う。
言葉や態度が粗暴で敬遠されていると思われがちだが、この男、意外にも女性に対してこうして笑顔を見せたりきちんと礼を言ったりと柔らかな部分も持ち合わせている。
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