過去のいざこざと真っ赤なバンダナ【前編】 昔……俺がゴリゴリの取り立て屋だった頃、こんなどうしようもねぇ俺に心の底から謝ってくれた男がいた。
ソイツは俺よりも小さくて無鉄砲で短気で口が悪くて品もなくて遅刻ばかりだしなんだったら人格も破綻してるような奴だけど、決して悪い奴じゃなくて。やってる事はめちゃくちゃなのに言ってる事は案外マトモで、荒れて閉ざしていた俺の心にスッと入り込んでくる不思議な男だった。
そんな男との出会いはやっぱりめちゃくちゃで、絡まれたと思ったら仲間の奴らに骨を折られ、結局警察が来て散り散り。後日もう一度俺の前に現れたかと思えば腰を直角に曲げての最敬礼。いやいや待て待て、全くもって意味が分からねぇ。
『すまねぇ……』
そう言って決着をつけに来たと言ったかと思えば持っていたエモノで自ら骨を折る。おいおい、だから全くもって意味不明だっての。逆にこえーよ。なんて、内心思ったりもしたが。
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