過去のいざこざと真っ赤なバンダナ 【中編】 拙僧にとって一郎は特別な男だった。「だった」っつーのは語弊があるが、一時は袂を分かっていたから強ち間違いじゃねぇ。
因縁生起。
結ばれては解け、解けては結ばれ。あの時拙僧が洗脳されようが、いずれ一郎との縁は一時的に離れてしまったのかもしれねぇけど。まっ、「たられば」も「過去」も考えたところで仕方ねぇから、目一杯拙僧なりの修行に励んだ。比較すんのもおかしいが、当然、ブクロに比べて寺は修行に適している。煩悩を払い、精神力を鍛え、体力だってつけた。拙僧はあの頃よりもずっと強くなった。
暫くするとナゴヤの街でも一郎を見かけるようになった。そう、TDDだ。殺気すら隠さねぇで気を張った険しい顔を浮かべるアイツは相変わらずの学ラン姿に赤いバンダナ。折角アイツが開いた扉はもう閉じちまったんだろうか。あれじゃあ拙僧出逢った当初の一郎じゃねぇかよ。
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