オーターさん、とよく知った男の声がする。
ここは、自宅で。今しがたバーから帰ったところで。
いるはずのないヤツが目の前に立っていて脳が混乱する。酒のせいでうまく頭が回らない。
珍しく飲みすぎたようだ。…幻覚を見るほど。
「…私もとうとうヤキが回ったか…」
「うわ、酒くさ!…アンタ、もしかして酔ってんの…?」
おずおずと顔を覗き込むドットは、やけに心配そうな顔をしていて、随分と都合の良い幻覚だなと思った。
本当のコイツなら、ギャンギャンと頭に響く声で騒ぎそうなものだが。
どうでもいいことを考えながら、半開きになった口から覗く鋭い犬歯と舌から目が離せない。
「んむっ!?っ、オーター、さ…!?んん…っ!!」
幻覚でも夢でもなんでもいい。ひどく渇いて仕方がない。
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