安産祈願 正月も二日になると神社はひとけがなくなるらしい。いや、多分、ここが地元の入り組んだ界隈にある、小さくてひっそりとした神社だからだろうと、入江は境内をキョロキョロと見回しながら考えた。ついさっき近所の人らしき参拝者が出て行って、ここには入江と広瀬の他には誰もいない。
入江はこの神社にくるのは初めてだった。以前から地図を見て存在は知っていたのだが、徒歩三十分の距離にある、駐車場のない神社に出向く機会は今までなかった。ところが今年は、なんの気無しに広瀬にこの神社の話をしているうちに、なんとなく行ってみようかという雰囲気になったのだ。
広瀬は入江よりも後ろで立ち止まり、参道脇の案内板を眺めている。入江も急いで引き返し、広瀬の隣に並んで案内板を見た。まだ入江が文字を読み始めないうちに、広瀬は「ここって安産祈願の神社なんですね」と言った。
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