春日という兄「優月!おはよう!お兄ちゃんだぞ!」
「…………」
優月の朝はそんな騒がしい兄の声から始まる。うごうごと毛布の中で蠢く優月をサッと抱えた兄はハッハッハッ!と笑いながらリビングに引きずり出した。優月も慣れたもので、その動作の中でずっと目を閉じていた。この兄が自分を放り出すことがないという確信は、十年前からあるのだから。
「優月、ジャムは何を塗って欲しい!?お兄ちゃんはブルーベリーを塗るぞ!」
「……いや……朝からそんな食べられな……」
「そうか優月もブルーベリーか!」
ノータイムでブルーベリーのジャムが塗られた食パンとミルクティーが出てくる。優月の目は未だに開かず、反論するほど頭も回っていないので、もそもそとそれを口に運ぶ。半分ほどパンもミルクティーも残したが、それも兄である春陽が全て食べ終えた。
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