明星の夢 明けない夢は見ないと決めていた。
でも、ひと時の夢でも良いからあなたと踊りたかった。たとえ覚えていなくても。
体がどこかを飛んでいる。風の音が耳に触りはらわたが圧で蠢いていた。
「大哥!」
誰かが俺を呼んでいる。重い瞼を薄く持ち上げると、青年が俺に向かって手を伸ばしていた。その顔を捉えて、頭が言葉を弾き出した。
言わなくては。そう思うのに口が開かない。
青年が俺を呼んでいる。
遠くで声が響いている。
「うおぁ!」
体が浮遊した感覚と同時に目が覚めた。ぐるりと視界が回り体が跳ねる。足がびくりと跳ね上がったのを霞んだ視界の端で捉えた。
ゴツゴツした床に背中が触れる。高台から落ちたかと思ったが体は痛くない。でも口の中は乾き切っていて、さっきからピイピイと雑音が耳にまとわりつく。
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