えのきとたちばなくんたちばな。立端愁。記憶の中のお前は響子を慕い、後を追った。純粋に、ただひたむきに。お前を一目見たときからその行く末はわかっていた。いずれ全ての輝きを束ねる者となるであろうと。実際、そうなったはずだ。
だがこの世界でもそうであるとは限らない。オレが起こしたほんの少しの影響がお前を凡百の徒に成り下がらせた可能性も拭えない。バタフライエフェクトというものは確かに存在する。まぁオレはひ弱な蝶ではなく大空を征く不死鳥であるが─────
しかし理由もなく、そんなわけはないという確信はあった。天頂にて揺るがず輝く星は地に落ちてくることはない。が、万が一ということもある。オレが見誤り──そのようなことは有り得ないが───彼が流星のひと時の輝きにすぎなかった可能性もある。
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