「やっべ……」
もう一つだけ……とカボチャ型のバスケットに突っ込んだ手が空を切り、空却はやっちまったと頭を掻く。
悪あがきとは思いながらもカゴをひっくり返して数回振ってみるが、当然何も出てこない。ハロウィンイベントで参加者に配るため、バスケットの中いっぱいに詰め込まれていた大量のお菓子たちは一つ残らず消え去っていた。
渡されたときにはこんなに配りきれるのかと思っていたのだが、見積もりが甘かったようだ。お決まりの『トリック・オア・トリート』の呼びかけのない者にまで積極的に配って回り、さらにちょこちょこつまみ食いをしていた結果、うっかりイベント終了前にお菓子を切らしてしまったのだった。
一緒にお菓子配りを担当している十四と獄の方に目を向けると、その周囲には何人か仮装している人たちの姿が見える。彼らはまだお菓子を配っているようだった。
1980