草笛ボッッッブボボッ!!ヴヴヴヴヴッッ!!ズボボボボボボボボ!!ポンッ!!ボン!!
晴天の空の下、相楽総三の奏でる草笛のメロディが広大な信濃の大地を駆け抜けた。
幼い左之助は彼の傍らで草笛の音色をうっとりと耳を傾けている。長くて辛い行軍の休憩中、総三の奏でる草笛の音色が左之助の近頃の楽しみであった。
振動するバイブレーターの如き振動音、大型の鉄馬から鳴り響く排気音のような重低音、軽やかな破裂音──どれもこれも左之助の疲れた心を癒す、オアシスのような音色だ。「隊長の草笛、最高ッス…。」
「ふふ、ありがとう。曲名は『ニラの葉と奥歯と指~下諏訪から愛を込めて~』だよ。」
「はわわ、隊長マジかっけぇッス!!」
左之助は顔を紅潮しながらはしゃいだ。
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