境界の灯夏の猛暑を抜けて、ようやく落ち着いた気温になったと思っていたのもつかの間、不意打ちのように冷たい風が吹き抜けた。
フィオナは、寒さに我慢できず試運転も兼ね今年初めて暖炉に薪をくべた。少しずつ広がる炎の暖かさで室内の温度も徐々に暖かくなってくる。
暖炉の前には、椅子に腰かける彼女と家族である小さな狼――モフモフが、彼女の足に丸まるようにして寄り添っていた。ふわふわの毛並みが暖かくも少しくすぐったい。
フィオナは椅子に座ったまま体制を少し崩して、足元のモフモフに手を伸ばし軽くつついた。
「モフモフ、もっと暖炉に近いほうが暖かいよ?」
しかし、当の本人は耳をぴくりと動かすだけで知らん顔。まるでここで良いんだよとでも言う様に微動だにしない。
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