ハロウィン「今日ばかりは、あなたたちも大腕を振って歩けるかもね」
春菊と名乗った女が、マンションの窓から町を見下ろし、悪戯っぽく笑う。
「今日はハロウィンだから。吸血鬼の貴方の天下ね、シウグナス」
眼下に広がるキャピトル・シティでは、吸血鬼に狼男、ゾンビたちが楽しげに歩いている。
「人の身で、形ばかりでも吸血鬼の姿になりたいと願うのは分からないでもないが、気に入らぬな」
春菊に話を向けられて、たいていのことは面白がる闇の王が、珍しく渋い顔をしている。
「あら、ホンモノとしては不満? 私に言わせれば貴方のほうが、いわゆる吸血鬼っぽくなくて新鮮だけどね」
太陽光も気にしないし、黒ずくめでもないし。そう言う春菊に、シウグナスは眉をしかめた。
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