臆病者と愚か者 遠くから雀の鳴き声が聞こえた。瞼を閉じていても感じられる眩さに、耐え切れないというように谷村は目を開いた。朝だ。遮光カーテンの隙間から漏れ出る光が、雄弁にそう伝えてくる。
隣で、谷村の腕にしがみつくように眠っている男には目もくれず、緩慢に寝そべったままもう片方の腕を伸ばして、ベッドサイドに置いていた携帯をつかむ。無機質な液晶には木曜日、六時十三分と表示されていた。
「……可燃ゴミか」
ぼんやりとした脳のまま、呟いた。ふと隣に目を向けると、秋山は変わらず眠ったままだった。谷村の掠れた声如きでは、この寝汚い男が起きるわけがないのだ。谷村も、もとより期待していない。
谷村の仕事は休日が不定であり、そもそも少ない。そのため平日であっても谷村が休暇であれば、多少無理をしてでも予定を合わせ、体を重ねることが多かった。今回も同様で、昨夜水曜日は互いに仕事で疲れた体で酒を飲み、その浮かれた頭のまま秋山邸に向かって、なだれ込むように唇に噛み付いた。
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