一目惚れ「アンタさぁ、なんで俺のパトロンとかやってんの?」
「……あ?暇つぶし」
「そうじゃなくて!他の奴じゃなくて俺にした理由!聞いてんの!」
この天才外科医サマが掃いて捨てるほど金を持て余してんのは知っているし、趣味という趣味に没頭して散財するところも想像はできない。だから、運命的なアレそれではなく暇つぶしだって答えられても噛みつくようなことでもない。やっぱちょっとだけムカつくけど。それでも、一目見てビビッと来たとかそんな理由で俺を選んでくれてたなら……なんて柄にもなく期待してしまう。
佐倉山零は顎に手を当てながらじっと晃牙の顔を見て、こう一言呟いた。
「顔」
――その日、大畑晃牙はパトロンでもあり家主である零の家から家出をした。零がその続きを口に出そうとしていたことには気付かずに。
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