屋烏より/丹穹 羅浮に住む子供の依頼を引き受けたのは、ひとえにその時の気分だ。依頼内容はそう難しい物でもなかったし、子供が用意できる報酬だって高が知れている。報酬の為に受けた訳ではない。貰える物は貰うけれど、最悪お礼はどんぐりで、なんて言われてもまあいいかなと思っていた。俺はどんぐり、結構好きだから。
「お兄ちゃん、ありがとう! これ宝物なの、お礼にあげるね」
子供が笑顔で差し出すそれを受け取って、腕全部を振り回すみたいな「ばいばい」にひらひらと手を振る。何度も振り返る子供の背中が見えなくなってから、そっと手のひらを開いた。ころんと転がるガラスの玉。
「丹恒の目みたいだ」
どうやら報酬はどんぐりじゃなくてビー玉だったらしい。少し古いのか褪せた浅葱色のそれは、見知った色によく似ていると思った。
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