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    MIY4_U

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    丹穹 前の垢で投げてたやつを格納

    ##丹穹

    屋烏より/丹穹 羅浮に住む子供の依頼を引き受けたのは、ひとえにその時の気分だ。依頼内容はそう難しい物でもなかったし、子供が用意できる報酬だって高が知れている。報酬の為に受けた訳ではない。貰える物は貰うけれど、最悪お礼はどんぐりで、なんて言われてもまあいいかなと思っていた。俺はどんぐり、結構好きだから。
    「お兄ちゃん、ありがとう! これ宝物なの、お礼にあげるね」
     子供が笑顔で差し出すそれを受け取って、腕全部を振り回すみたいな「ばいばい」にひらひらと手を振る。何度も振り返る子供の背中が見えなくなってから、そっと手のひらを開いた。ころんと転がるガラスの玉。
    「丹恒の目みたいだ」
     どうやら報酬はどんぐりじゃなくてビー玉だったらしい。少し古いのか褪せた浅葱色のそれは、見知った色によく似ていると思った。

     ◇

    「丹恒、いる?」
     資料室の扉を勢いよく開けながらずかずか入り込むと、どこか呆れたような諦めたような、仕方ないなとでも言いたげな顔と目が合った。寝転がると体が痛くなる万年床で、胡座の上に本を広げているのは丹恒だ。
    「……どうした、穹」
     ノックしろとかそれは声を掛けたうちに入らないとか小言が飛んでくるかと身構えたものの、今回は無いようだ。それはそれで少しつまらないような気がした――俺は丹恒のちまちました小言が案外嫌いじゃない。けれども、最近の丹恒はもっぱら俺に甘いので小言が飛んでくる事も随分減ってしまった。嬉しいようなむず痒いようななんとも言えない気分になる。
    「丹恒は俺のことが大好きだな……」
    「……。本当に、急にどうした。何だ?」
     また何か変な物でも飲んだのか、と問い掛けられて無言で首を横に振った。丹恒は俺がいつでも変な物を飲んでいるとでも思っているのだろうか。失礼だと思う。たまにしか飲んでいない。
     俺を大好きな事は特に否定しない丹恒の隣に同じように座り込んで、ちょっとやそっとじゃびくともしないその体に凭れながら手元を覗き込む。
    「今何してるんだ?」
    「アーカイブの整理をしている」
    「ふーん」
     聞いたけど、あまり興味はなかった。内容に興味はないけれど、丹恒がしている事には興味がある。丹恒の肩にこてんと頭を乗せて、このままこうして作業を眺めているのも悪くない。
    「……用事があるんじゃないのか」
     しかし、ぱたんと本を閉じてしまった丹恒は、つまり作業よりも俺を優先してくれるらしい。なんという事だ、丹恒ってやつは本当に俺の事が大好きなのだ。俺も丹恒の事は大好きだけど、なんとなくむずむずしてどうしようもなく逃げ出したくなる時がある。逃げ出さないけど。全宇宙に名を轟かせる銀河打者はそんな事で逃げたりしないからだ。
    「お土産渡そうと思って……」
    「土産?」
     頷きながらごそごそポケットに手を突っ込んで、飴とかチョコとかを掻き分けてビー玉を手に掴む。ほら、と丹恒の前で手を開くと、資料室の明かりに照らされてビー玉がきらきらと光っていた。やっぱり綺麗だ。
    「いいだろ。丹恒の目みたいで」
    「俺の?」
    「今日受けた依頼でお礼に貰ったんだ。丹恒の目の色に似てる」
     ビー玉を指先で摘んで、丹恒の瞳と同じ高さで光にかざす。どちらも透き通って綺麗だと思った。丹恒は少し驚いた顔をしてから、一瞬、言葉を探すみたいに視線を彷徨わせた。
    「お前の目の色の物はないのか」
    「えっ、俺? どうだろ……探せばあるかもしれないけど。丹恒、俺の目の色のやつがいいのか?」
    「そうだな、できれば。……それは元よりお前の物だから、お前が持っているといい」
     拍子抜けしたような気分だった。丹恒がそんな事を言うなんて珍しいし、俺の目の色の物が欲しいとか、なんだかちょっと気恥ずかしい。
    「……えっと、探しとく。でも、そしたら俺たちお互いの目の色の物をお揃いで持つことになるよな」
    「そうだな」
    「それは、なんていうか」
     なんていうか。すごく。言葉に詰まって黙り込んだ俺を、丹恒がビー玉と同じ色の瞳でじっと見ている。そんなに見て俺に穴が開いたらどうしてくれるんだ。ちゃんと埋めてくれるんだろうか。勝手に熱くなってきた頬を見られたくなくて俯くと、丹恒の手がそっと俺の肩に触れた。それからほんの少し身を屈めて掠め取るみたいに口付けられて、俺はいよいよこのまま溶けてなくなってしまうんじゃないかと思った。
    「た……、丹恒、俺、たまにだけど」
    「ああ」
    「丹恒のこと大好きだし、逃げたくなんてないのに、逃げ出したくなる時がある……なんでだろう」
     たとえば、今とか。
     肩に添えられた手に力が入る。俺を見るその瞳がいつもよりも深い色に輝いて、それをもっと見ていたくて、でも逸らしてしまいたいようなおかしな気分だ。丹恒はいつも優しいのに、まるでこれから食べられるみたいな心地になってしまう。丹恒の薄い唇が殊更ゆっくり動いて、穹、と低い声が耳朶を打った。

    「そういう事は、俺に言わない方がいい。……逃がしてやれなくなる」

     丹恒、お前ってそんな顔もできたんだな。



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    Replies from the creator

    MIY4_U

    DOODLE悠アキ
    今すぐキスして! 今ちょっといい? 時間ある? よかったら話聞いてくれない? いやいや、大丈夫大丈夫、すぐ終わるから。ほんとだって。コーヒー飲む? 飲まない? あ、そう。味に拘りあるんだ、へえ。ああ、それで、話だけど。たとえばあんたに友達が居たとしてさ――何? いや、言葉のあやだって。嫌味じゃないって、他意もないってば。で、そう、友達が居て――それで、その友達とはかなり、なんていうか、いい感じっていうか。まあ、そう。好きだなって思ってる友達って事。うんうん、いいから、はいはい、逃げない逃げない。でさ、こう、一緒にいて、あーなんか今めちゃくちゃいい雰囲気だなって。あるでしょそういうの。分かんない? あ、そう……いいけど。まあ、それで、一緒に映画とか観てさ、あれがああでこれがそうでとか話して、同じタイミングで飲み物飲んで、同じように笑ってさ、あー、今、めちゃくちゃ好きだなーって思って、言っちゃったとしてさ。何をって? 好きだ、って。ああ、うん、まあ、そう。言っちゃったんだけど。あのさぁ、ちゃんと聞いてる? 聞いてるならいいけど。それで聞こえてんの? へえ、やっぱシリオンって耳いいんだねぇ。で、うん。僕の話だけど。それで、好きって言ったら相手からも好きって返してもらった場合、これってさ……付き合ってるって事になると思う? え? いや、違うって、クズとかそういうんじゃないんだって、そうじゃなくて、なんか日常会話の延長みたいな感じで好きって返されると冗談なのか本気なのか分からないって話で……何? いや、今べつに自己紹介なんてしてないんだけど?
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