👹🔪勇次郎は他人からの視線に敏感だった。たとえば百獣の王ならば、瞳だけで相手を威嚇し勝利する。目は口ほどに物を言うという言葉があるように目線は生物におけるコミュニケーションの大部分を担っているのだ。
様々な感情を孕んだ視線を向けられ慣れている勇次郎にとって、目だけで相手の思考を読み取ることなど造作でもない。特に欲情なんてものは得意分野だった。恍惚とした眼差しはいつだって勇次郎を興奮させる。生物としての本能を満たそうとするその感情は、喧嘩と同じようなスリルを味わわせてくれる。
とはいえ、だ。
それを息子から向けられていることに気付いたときは流石のオーガでも困惑した。
「……なんでいんの」
居間であぐらをかいて座る勇次郎を見て言い放った刃牙の言葉は、あまりに冷たいものだった。
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