眠らぬ獅子が眠るとき「なあ、じっちゃん。眠るってどんな感じなんだ?」
邸に帰ってきた頼政を出迎えた獅子王が、二人で居室に入るなり投げかけた問いに、頼政は少し間を置いて静かに返した。
「眠り、か。心身を休める為には必要不可欠なことだ。身体だけでなく心を休め、しばし浮世の些事から離れる」
「夢ってのをみることもあるんだよな?」
「ああ。眠りについた後は意識はなくなるが、夢をみることもある」
ふうん、とだけ呟いてしばらく難しい顔をしている少年に、老将が何かあったのかと問うてみると、考え考えといった様子で少しずつ言葉が返ってきた。
「寝るときの人間ってどんなこと考えてんのかなって、気になってさ」
金の髪を持つ少年は、自らの傍らに佇んでいた相棒の背を撫でながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。
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