とある令嬢の最期の祈り「お兄さま逃げて…私はもう駄目よ。わかってるくせに…頭がよくて優しくて格好いい、私の最高のお兄さまですもの」
「ね、逃げてね。そして私の分までしっかり生きてね」
「私の髪をあげるわ。生まれてから一度も切ってない、自慢の髪よ…お守り…きっとお兄さまを護ってくれるわ…いつだって一緒よ…」
「さぁ、いって…逃げてね…」
最期だってわかったから、私、頑張ってたくさん喋ったわ。
いつもだっておしゃべりだけど、叩かれた頭は痛いし、指先だってもう力が入らない。口を動かすのも、息をするのも大変なのよ。
でも滅多に泣かないお兄さまが、かしら。
お父さまとお母さまが恐ろしいひとたちに殺されてしまって、言われるまま逃げ惑ってたどり着いたスラム街。
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