凪_ナギ_Nagi極道の狭間に身を起きながら、その実態はギャングであり背負う紋など存在もせず。
しかし中枢にあるが故、そこらの三下よりよほど力を持つ、それが世に言う『調整屋』の実態である。
そこに生きる者にとって戸籍上の名は符号に過ぎず、個を指し示すものと言えば、組織に与えられたコードネームとなる。
Nagi.
愛着を持たぬよう、名からは取らないことが多いのだという。親もまた、似たようなコードネームを持っていた。
組織の中で、実の両親が育ての親となることもあれば、全くの他人が育てることもままあった。なんと言っても、子を育てられるだけまともな人間が指折り数える程度にしかいないような場所なのだ。
ナギの両親は珍しく、双方揃って実の親であるらしかった。彼らはナギを身ごもった頃から第一線を離れ、同じく組織の誰かが拵えた、もしくはどこぞから拾われてきた子どもたちを育てるようになった。
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