朝三暮四の成れの果て 一頭の馬が野を駆ける。
丈の低い草が地面を覆い、天と地の境界は誰かが区切ったようにまっすぐ横へ引かれている。雲がたなびき、陽は傾いていた。夕星が輝き始めている。雲と星、落ちかけた太陽。それ以外、何もなかった。
そんな場所でどこかへ向かう馬を見た。荷はなく、鞍もなく、傍を歩む人もない。何を気にするというのだ、と言わんばかりに馬は全速力で走っているようだった。あの馬も母がおり、父がいたのだろうけれど、なんだか想像が付かなかった。どんな声で甘えたのか。
考えているうち、馬は遠く離れていた。いくつかの押し潰された茎といくらかの剥き出しになった土だけが、存在していた証だった。それすらもやがて風にさらわれていく。
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