指環 鷹見会長の手に、指輪が光っている。というのが最近の職員の間での専らの話題だった。
公安の休憩所で、飽きるほど飲んだ缶コーヒーを啜りながら、目良は目の前の男を見る。年端もいかないころから知っている鷹見会長……ホークスは、確かに先日突如として左手の薬指に指輪を付け、出勤してきた。あの日は流石の自分も、思わず振り返ってもう一度見た。
「目良さん、何か聞きたいことでも?」
ニヤニヤとした笑いを口元に浮かべて、彼が聞いてくる。そんな風に育てたのは誰だっただろうか。
「そうですね、あなたも解っているでしょうが、それのことですね」
彼の膝に置かれた左手を指差す。ですよね、と呟いて、彼は左手をひらりと陽に翳した。
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