帰る場所 ティントへ行くのは最小限の人数でいい。それは戦況を見ても正しい判断だったと思うが、連れて行くメンバーからさりげなくフリックを除外させたのは完全に私情だった。
今の同盟軍には、自分たちがほぼ全てを担わなければならなかった最初期の頃とは比べものにならないほど人材が揃っているから、二人揃って抜けたところで穴を埋める者には困らないだろう。ビクトールとしてもフリックがいれば心強いに決まっている。それでもそんなことをしたのは、あの男が明確に自分の弱点になってしまったからだ。
あの卑劣な吸血鬼は、一度は自分に負けたという事実が許せないらしく、大切だった彼女の亡骸を目の前で弄んで見せた。本物だったのかは分からないが、尊厳を踏みにじられたことに変わりはなく、思い出せば怒りで手が震えそうになる。
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