熱の記憶と宝物キッチンの戸棚を片手で静かに閉めながら、左手ではスマホを操作する。新名が開いているのは恩田とのトーク画面だった。そこに今日の買い出しで必要なものをメモしていく。洗面所や風呂周りはすでに確認したから、これでもう出掛けられる。キッチンをぐるりと見回し、メモを頭から読み返して送信ボタンを押すと、リビングで小さな通知音が鳴った。
買い物カゴを持ってリビングに顔を出す。互いに休みだからと恩田も同行してくれることになっていた。しかし、ソファで新名を待っていたはずの彼は、腕を組みながら目を閉じている。近づいて耳を澄ませると、微かな寝息が聞こえてくる。待たせすぎたからか、ここ数日任務が続いていたからか。新名はカゴを床に置き、肩が触れ合う位置に腰を下ろした。
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