思いがけぬ褒美紫鸞は両手一杯の書簡を、曹操の執務室へ届けに向かった。
いつも通り厳しい表情をした主君が、机に向かっている姿を想像していたが、声をかけて入室するとそこには、眉間に皺を寄せ、頭を押さえながら目を瞑っている曹操がいた。
「曹操、どうかしたのか?」
抱えていた書簡を近場の机に置き、紫鸞は心配そうに駆け寄り声をかける。
「いつもの頭痛か?」
「いや、此度は気分が悪くてな……」
曹操は普段の強い口調ではなく、かすれた声でそう答えた。
「休んだ方がいい」
そういうや否や曹操の腕を取り、迷わず執務室に併設された仮眠室へ誘導し、そっと寝かしつけた。
体温が伝わる距離で、自然と手が曹操の腕に触れたとき、紫鸞の心臓は早鐘を打つ。
(こんなにも、曹操のそばにいるだけで心がざわつくなんて……いや、今はそんなことを考えている場合ではない)
1592