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    rainno🐌

    @shamisembrella

    かたなとさにわ中心。一次創作農家出身。
    絵と字を描くかたつむり。雑食で偏食で悪食。

    drawing / writing
    fanarts mained Touken Ranbu / my originals
    they might contain immorality and palaphilia.

    website ◆ http://unohanakutashi.dreamlog.jp/#top
    pixiv ◆ https://pixiv.me/5amidarainn0
    Tumblr ◆ https://unohanakutashi.tumblr.com
    form ◆ https://forms.gle/JAPrqFZMKqb2dxP27

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    rainno🐌

    MAIKING一次創作。
    小説のようなシナリオのような。

    歌を忘れた少年と声を失くした少女が音の無い世界で出逢う話。


    『ルートヴィヒとクラリネット』


     ― 1 ―

     高校に進学した春、木菅美鈴(こすがみれい)はひとり校舎の廊下を歩いていた。新しい担任が不要な気を利かせて、吹奏楽部の定例演奏会には出なくていいと言ったのだ。いくら自分が出席すると訴えたところで、無理しなくていい、内申には響かないようにする、の一点張りだ。声を荒らげられたなら気迫押しもできたのだろうが、手話や筆談では伝わるものにも限度がある。向こうは一応厚意のつもりなんだろうし、あまり無下にするのも悪い気がして、結局はその提案を呑む事にした。
     昨年のちょうど今頃、美鈴は高熱を出し倒れた。原因ははっきりしなかったが、おそらくは感染症の類だろうとの事だった。命に別条は無く、昏睡状態から醒めたあと二週間程度の療養で体調は快復した。耳と声を失った事を除いて。
     長時間熱に浮かされ続けた影響で聴覚神経と声帯に障害が残り、音を感じる事も発する事もできなくなってしまった。幾ら楽観主義とて、それにショックを受けなかったといえば嘘になる。しかし、かといって塞ぎ込んでしまう柄でもなかった。友達と話すため、同じ学校に通うため、必死に手話や読唇術を身 3975