笑い事じゃない!遠くから名前を呼ばれた気がして、江澄は、今まさに、口を付けようとしていた湯呑を置いた。
「じゃんちょーん!」
今度は間違いなく聞こえた。このやかましさが幻聴であるはずもない。
修練場に出ると、剣に乗った人影が天空からゆっくりと降りてくる所だった。まだ剣は、人の身長ほどの高さにあるというのに、含光君の腕に抱えられていた魏無羨は、地面に向かって、ぴょんと飛び降りた。
「江澄、元気か?」
「元気か? じゃない。来るときは連絡しろと言ってあるだろう」
「えっ、そうだっけ?」
「また俺が張っている結界も破りやがって」
江澄の代になり、蓮花塢にも雲深不知処同様。結界を張るようになっていた。
船で波止場までやってきた者のみ通す仕組みになっているのを、魏無羨は「急いでいた」「わざとじゃない」と幾度となく駄目にしている。
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