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    amechantakusan

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    忘羨+かわいそうな江澄

    ##魔道祖師

    笑い事じゃない!遠くから名前を呼ばれた気がして、江澄は、今まさに、口を付けようとしていた湯呑を置いた。
    「じゃんちょーん!」
    今度は間違いなく聞こえた。このやかましさが幻聴であるはずもない。
    修練場に出ると、剣に乗った人影が天空からゆっくりと降りてくる所だった。まだ剣は、人の身長ほどの高さにあるというのに、含光君の腕に抱えられていた魏無羨は、地面に向かって、ぴょんと飛び降りた。
    「江澄、元気か?」
    「元気か? じゃない。来るときは連絡しろと言ってあるだろう」
    「えっ、そうだっけ?」
    「また俺が張っている結界も破りやがって」
    江澄の代になり、蓮花塢にも雲深不知処同様。結界を張るようになっていた。
    船で波止場までやってきた者のみ通す仕組みになっているのを、魏無羨は「急いでいた」「わざとじゃない」と幾度となく駄目にしている。
    「ごめんって、急いでたんだ!」
    両手を顔の前で合わせた魏無羨、お決まりの文句に、もう一言二言、嫌味を言ってやろうと開いた口は、すぐに閉じることになった。魏無羨の後ろで、地面に降り立ってからずっと、無表情に突っ立っていた藍忘機に、さえぎられたからだ。
    「江晩吟。私が結界を張りなおそう」
    「結構だ!」
    よその人間に、大切な結界を張りなおさせるなんて、それがたとえ含光君であっても、醜聞に繋がりかねない。
    再び、魏無羨に向き直って。
    「で、今日は何の用だ? お前が来ると知らなかったから、もてなしの用意は無いぞ」
    「また~どっかに酒くらい有るだろ。それに、なくても誰かに買いに行かせれば済む話じゃないか」
    「あいにく、今日は皆、忙しいんだ。さっさと用事を言え」
    「そうそう、随便を取りに来たんだ。いま、江澄が持ってるんだろ?」
    「お前っ!」
    金丹を江澄に譲って以来、意味がないからと剣を佩かなくなった魏無羨が、再び随便を欲するということは、つまり。
    「結丹した!」
    魏無羨の満面の笑みには、自分でも信じられないけど、というような動揺の色も含まれている。
    江澄は、今にも泣きだしそうなのを悟られないように、ぐっと腹に力を入れて、そこらへんに居るだろう弟子に聞こえるよう叫んだ。
    「おいっ、誰か! 随便を持ってこい」
    持ってこさせた随便を受け取った魏無羨が剣を抜こうとする。それと同時に、江澄は、三毒を抜き、打ち込んだ。
    もちろん随分と手加減はしたつもりだが、随便は剣芒を放ち、江澄の攻撃を受け止める。
    魏無羨の結丹をしたという言葉に偽りは無かった。
    「やると思った」
    魏無羨のからかうような口調に「チッ」と舌打ちして、江澄は剣を納めた。
    「昔のお前ならもっと反応が早かった」
    「まぁまぁ、一度、死んで、十数年ぶりに剣を振るったにしては上出来だろ。流石、なんでもできる夷陵老祖様だ!」
    「バカ言うな。だが、どうやって結丹を成しえたんだ?」
    「それがさ、俺も色々試したから、何が効いて何が効かなかったのか、最初は見当もつかなかったんだけど」
    一度、言葉を切って。随便を腰に差してから。
    「らんじゃん! 避塵貸して」
    藍忘機が躊躇なく差し出した避塵を魏無羨は重そうに両手で受け取った。そして、そのまま江澄の方に、その柄を向ける。
    「抜いてみろ」
    「抜いてみろって……」
    含光君には、お世辞にも好かれているとは思えない自分が、避塵に触ってもいいものか。俺だったら嫌いな奴に、三毒を好き勝手にされることなど、我慢がならない。
    避塵の持ち主の顔色をうかがうが、いつも通りの無表情からは、可とも否とも読み取れなかった。
    「ほら、早く。俺の力だと、いつまでも持ってらんないよ」
    魏無羨に促されるまま、試しに避塵の柄に手を掛ける。が、やはり、鞘に納まったままピクリともしない。
    魏無羨の随便ですら封剣されているのだから、避塵を抜けないというのも、何も不思議なことではない。
    しかしながら、江澄が避塵を抜けないことを確認した魏無羨は、剣を持ち主に返すのではなく、自身で抜いてみせた。
    まさか、今度は藍忘機から魏無羨へ金丹の移植を……いや、藍忘機は剣に乗っていた。
    「どういうことだ?」
    「これは俺の仮説だが」
    「あぁ」
    「俺と藍湛は毎日、飽きもせず抱き合っている!」
    ぶっ! と思わず噴き出した。
    「この! 恥知らず! 何を言い出すんだ!」
    「聞けって! だから、俺は毎日、己の腹の中からあふれるほど、藍湛に精を注がれてるわけだ」
    「聞きたくない」
    いくら幼馴染とは言え、相手が女だろうが、男だろうが、そんな生々しい話など、聞くに堪えない。胃に鉛を詰め込まれているみたいに、どんどん胸の辺りが重くなってくる。
    「たぶんそれが、結丹に良い影響を及ぼしたんだろう。だから避塵は、藍湛の霊力が混じた金丹を持つ俺と、藍湛の区別がつかなくなったんだろうな」
    げんなりしている江澄に魏無羨が更に鳥肌の立つようなことを畳みかける。
    「こんな簡単なことで結丹できるなら、あんな痛い思いしてお前に金丹をやらずに、俺が江澄を襲えば良かった」
    魏無羨! 口にしていいことと悪いことがあるぞ!
    とんでもない発言をする魏無羨の傍らで、俺が避塵に触った時には全くの無反応だった藍忘機に、背筋も凍る冷ややかな目でギッと睨まれた江澄は、いよいよ気が遠くなった。
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