肉が落ちて痩せこけてしまった彼女を抱き締め直す。元々細いと思っていたが、食欲低下と運動不足で更に細くなってしまった。それが長い年月も彼女を苦しめている証拠にも思えて、不安を振り払うように回した腕に力を入れた。
彼女が傑に執着するのは身勝手なことだと思う。傑がこいつの幸せを決めつけるのも身勝手なことだと思う。彼女の体温を感じて安心している俺が、一番身勝手な奴だと思う。どうして十年もの間、彼女に会いに行くのか僕はまだ分からない。いや、察しはついているけど理解したくない、というのが正しい。それを認めてしまえば本当に身勝手で、我が儘なことを彼女に押し付けることになる。彼女にはただ笑ってほしかった。たとえ現実から目を逸らし幸せになれないとしても。
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