日和誕2021かえひよ 玄関を開けたら、日和がいた。
そろそろ日付も変わろうかという夜更けにチャイムを連打され、どこぞの酔っぱらった先輩でもなだれ込んできたのかと、思ったのだ。だったら出る必要ねえかなあ、とも。
「金城が寂しがってないかと思ってさ」
しかしそこに立っていたのは確かに、鼻先を赤くして白い息を吐きながらそんなことを嘯く、日和であった。それならもっと早く迎えに出たのにと、浮かびかけた後悔は、口にはしないことにする。
「寂しいなら郁弥クンの家にすれば? 近いだろ」
「なに言ってるの。こんな時間に行ったら近所迷惑でしょ」
飄々とした調子で生意気ばかり言いながら、勝手知ったるというふうにするりと俺をすり抜けて、靴だけは手早くそろえ日和は俺の部屋へ上がり込んだのだった。すれ違いざまに、冬の冷えた匂いがした。凜と澄んで、どこか悲しげな香りだった。
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