ブラッドリーと未知のウイルス「あんた、それどうしたんだ?」
「あ?」
それは夕飯の準備をしていた時だった。つまみ食いをしようとする食いしん坊の腕を掴み上げると、手首の裏側に湿疹ができていたのだ。
「なんだこれ…まぁ、すぐ治んだろ」
ブラッドリーも今気付いたようで、不思議そうにしている。だが彼の言う通り、赤子でもあるまいし小さな湿疹など大騒ぎするほどのことでもない。
「ちゃんと野菜食ってビタミン取らねぇから、そんなんできるんだよ」
「げ、やめろ。野菜は食わねぇ!」
なんてやり取りをした翌日、ブラッドリーは部屋から出てこなかった。はじめは、またくしゃみで飛ばされたのかと思い気にしていたかった。が、翌日になっても彼は姿を現さず、悪い予感が脳裏をチラつく。どこかで怪我でもしたのか。部屋から出れない事情があるのか。様々な可能性で頭が埋め尽くされそうになったその時、魔法舎に誰かの指笛が響き渡った。
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