5月5日×時×分その時期にしては蒸し暑く、じんわりと額に汗が滲むほどだった。
病院の廊下に並んだ三人掛けの椅子。
その一つに腰掛けてぼんやりと正面の真っ白な壁を見ていた。
隣にはそわそわと落ち着きのない様子の父親が立ったり座ったりを繰り返している。
どれくらいの時間が経ったのか、ぽつぽつと大人の声が聞こえていただけの無機質な扉の向こうから、突然赤ちゃんの大きな泣き声が聞こえてきた。
それはか弱くも力強い……何とも形容し難いが、とにかく愛らしくて生命力に満ちた声だった。
その声が聞こえた瞬間、隣に居た父親は勢いよく扉の前に駆け寄り、けれども開けてもいいものか、と手摺りに手を掛けるのを躊躇っている。
大男があたふたとしている姿は何とも滑稽だ。
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