「…竜馬」
久々にその声に名前を呼ばれて、僅かに身体が震えた。
「竜馬」
低音が、身体の隅々にまで染み入ってくる
「りょ…」
「うるせぇな!何度も呼ぶんじゃねえよ!」
堪らず、頬に伸ばされていた手を邪険に振り払う。
それだけでも隼人は酷く罪に苛まれた表情をするのだ。
「…ばっかじゃねーの…何度も何度も名前呼ぶのがうっとおしいって言っただけだろうが!」
その表情に少し焦りを覚えて、竜馬は今度は自分から、視線を下に落としていた隼人の顔を両側から挟み込むようにして引き寄せた。
「…竜馬」
「だからそれはもういいって!」
顔が紅潮するのに気づきつつも、抑えられなかった。
「…名前呼んでばっかりじゃなくて………早くしろっての!」
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